2026.09.17
カッピングで身体はどう変わる?
今回はカッピングのお話です。
カッピングにはさまざまな考え方がありますが、 今回は現在分かっている研究も踏まえながら、 私が施術で大切にしている 「痛み」と「身体の動き」へのアプローチについて お話しします。
カッピングというと、 施術後に残る丸い跡を思い浮かべる方も 多いのではないでしょうか。
カッピングは古くから用いられてきた施術で、 伝統的な中医学では、 身体の状態を捉える考え方とともに 治療の一つとして使われてきました。
現在でも施術者によって カッピングに対する考え方や使い方はさまざまです。 そのため、ここからお話しする内容は 「これだけが正解」というものではなく、 現在の研究と臨床経験を踏まえた 私自身の考え方として読んでいただければと思います。
KEY POINT
私が考えるカッピングのポイントは、 「疼痛調節」と「組織への機械的刺激」。
カッピングの跡=身体の悪さ?
カッピングでは、 カップ内部を陰圧にすることで 皮膚やその下の組織が引き上げられます。
吸引によって毛細血管から血液が漏れ出すことで、 赤色や紫色の跡が残ることがあります。 吸引の強さや時間、部位、 皮膚や血管の状態などによっても 跡の出方は変わります。
そのため私は、 「色が濃いから身体が悪い」 「この場所に跡が出たから、この臓器が悪い」 といった判断をするために カッピングを行っているわけではありません。
私が主に目的としているのは、 コリや痛みの軽減、 そして身体を動かしやすくすることです。
なぜ痛みが軽くなるのか
カッピングによって痛みが変化する仕組みについては、 現在も完全には解明されていません。
研究では、 局所の血流変化や組織への機械的刺激、 神経系による疼痛調節など、 複数のメカニズムが候補として考えられています。
痛みの感じ方が変わる
痛みは、 傷んでいる場所から脳へ 一方通行で送られるだけのものではありません。 触覚など別の感覚入力や、 脊髄・脳での調節によって 痛みの感じ方が変化することがあります。
皮膚やその下の組織が引き上げられる
カッピングの特徴は、 押すのではなく「吸って引き上げる」こと。 陰圧によって皮膚や皮下組織に 機械的な刺激が加わります。
動きやすさが変わることがある
研究では、 カッピング後に関節可動域や柔軟性が 一時的に変化したという報告もあります。 ただし、すべての研究で 同じ結果が得られているわけではありません。
「ゲートコントロール」とは?
痛みの変化を説明する考え方の一つに、 「ゲートコントロール」という理論があります。
分かりやすい例が、 どこかに肘をぶつけたときです。
痛いところを思わず手で押さえたり、 さすったりしますよね。 すると、少し痛みが和らいだように 感じることがあります。
これは触れる・圧迫するといった 別の感覚入力が加わることで、 脊髄や脳で行われる痛みの処理が変化することが 一つの説明として考えられています。
痛みは、 「悪い場所の大きさ」をそのまま表しているのではなく、 神経系によって調節される感覚でもあります。
カッピングでも強い感覚刺激が加わるため、 こうした疼痛調節が 痛みの変化に関わっている可能性があります。
ただし、 「カッピングの鎮痛効果は ゲートコントロールだけで説明できる」 と証明されているわけではありません。
現在では痛みの調節は、 脊髄だけでなく脳からの下行性の調節なども含めた もっと複雑な仕組みであることが分かっています。
では、「滑走性」はどうなのか
私が施術をしていて、 もう一つ大切にしているのが 「滑走性」という考え方です。
痛みがある場所そのものではなく、 少し離れた場所にカッピングを行うことで、 動きや痛みが変化することがあります。
また、 カッピングをつけた状態で身体を動かすと、 先ほどまで動かしにくかった動作が 楽になるケースも経験します。
感覚的に表現すると、 「身体の表面の遊びをつくる」 ようなイメージです。
ただし、 ここは慎重に考える必要があります。
カッピングによる陰圧が 皮膚や皮下組織に機械的な変化を与えることは 研究でも確認されています。
一方で、 それが「筋膜の癒着を剥がした」 「脂肪組織の癒着が取れた」 「筋膜の滑走性が改善した」 から症状が良くなった、 とまで断定できる十分な根拠はまだありません。
身体に変化が起きることと、 その変化が「なぜ症状を改善したのか」は、 同じ話ではありません。
ここはカッピングを考えるうえで、 とても大切なポイントだと思っています。
研究ではどこまで分かっている?
近年は、 カッピングと筋骨格系の痛みに関する研究も 少しずつ増えてきています。
2025年に発表された 慢性的な筋骨格系疼痛を対象とした システマティックレビュー・メタ解析では、 カッピングによって痛みが 短期的に軽減する可能性が示されました。
一方で、 身体機能について明確な改善は確認されず、 研究による結果のばらつきも大きくみられました。
また、可動域について改善を示した研究もありますが、 プラセボと比較すると 明確な差が確認できなかった研究もあります。
つまり現在のところ、 「カッピングには何の意味もない」 と言い切るのも、 「筋膜を剥がして根本治療できる」 と言い切るのも、 どちらも少し違うと考えています。
私がカッピングで大切にしていること
私はカッピングの跡の色だけを見て 身体の状態を判断するのではなく、 施術前後で 「痛みがどう変わったか」 「身体がどう動くようになったか」を 大切にしています。
カッピングをつける場所も、 必ずしも痛みがある場所だけとは限りません。
身体を実際に動かしてもらいながら、 どこに刺激を加えると動きが変わるのかを確認し、 必要に応じてカッピングをつけた状態で 身体を動かしていただくこともあります。
「なぜ効いたのか」を決めつけるより、 目の前の身体がどう変化したのかを丁寧にみる。
カッピングには、 まだ科学的に分かっていないことがたくさんあります。
だからこそ、 昔から伝わる考え方も、 新しい研究も、 実際の身体の反応も大切にしながら、 一つの説明だけに決めつけず 施術に向き合っていきたいと思っています。
カッピングを受けたことがない方も、 「跡をつける施術」としてだけではなく、 痛みや身体の動きを整えるための 選択肢の一つとして知っていただけたら嬉しいです。
